2010年11月13日土曜日

乙武先生の小説「だいじょうぶ3組」(講談社)

「各自の個性(長所)を伸ばすユニークな教育」

私(68歳)の誕生日に、東京の実家に住む妹からもらった手紙に、この先生の
「杉4」(杉並区立第4小学校)での3年間の教員生活に関する短い手記の新聞
切り抜きが同封されていた。実は「杉4」は私の最初の母校である。もっとも最
初の10カ月しか在学していなかったが(一年生の2月初めに、大田区に家を引っ
越したからだ)。その記事の中に、この小説のことがちょっとふれてあった。

そこで、興味本位に買って読んでみた。私はずっと海外で30数年生活している
ので、乙武先生が、かの有名な「5体不満足」の著者であることを知らなかった。
小学校で「車椅子に乗る手足のない教師」を勤めることは、大変な勇気と努力が
必要だろうが、彼はその仕事を3年間立派に果たして、生徒たちにとても惜しま
れながら、最近退職した。この本は、その体験を題材にして、描かれた小説であ
る。

私は「杉4」で、絵の大好きな生徒の一人だった。外に全く取り得はなかったが、
秋の文化祭で、一風変った「電車」(高円寺を通過する中央線)の絵を描いて、
金賞に選ばれた懐かしい思い出がある。この小説には、そんな生徒も登場する。。。
一人一人の生徒の個性を大事にして、それをできるだけ伸ばそうと懸命に努力す
る5体不満足の「赤尾先生」の姿が、実に印象深く描かれている。子供も大人も
読み始めるといつの間にか、引き込まれてしまう小説である。

私は「杉4」から最寄りの小学校「東調布第3」に転校したが、そこで、とても
ユニークな担任に(卒業まで3年間)恵まれた。鹿児島出身の浅黒い「中山」と
いう先生だった。図書係をしていたこの先生から、製本のしかたや伝記をむさぼ
り読む癖を伝授された。それ以来ずっと「本の虫」になってしまった。。。私が
結局(画家にならず)癌研究者になってしまった由縁はそんなところにあった。
もっとも、2、3年前に研究所を退官して以来、童心に帰って、広い庭の塀に向
かって、毎日色んな壁画を描いて、余生を楽しんでいる。。。

最後に一言。乙武先生を小学校の教師として採用した杉並区の教育関係者たちの
優れた「英断」にエールを送りたい! 

0 件のコメント: