カロリン・ルーベンシュタイン著「癌を克服させた辛抱強さ」
癌を闘い抜き、みごとに克服した20名の若者の体験談
癌とは一般的には、老人病の1つだと解されている。しかしながら、元気な若者
でも、小さな幼児でもかかる特殊な癌、例えば白血病や脳腫瘍であるグリオーマ、
NF(神経線維腫症)、TSC (結節性硬化症 ) などがある。
治りそうもない癌を克服して、ツア・ド・フランスを7連覇した有名なサイクリスト、
ランス・アームストロングのごとく、多くの若者たちが癌の恐怖を乗り越え、
辛抱強く病気を克服し、彼らの人生の夢をみごと実現してきた。ハーバード
大学の院生(専門は臨床心理学)である著者が、白血病、脳腫瘍、ホジキンス
リンパ腫などの小児癌を克服した20名の若い癌生存者の感動的な体験談を、
1冊の本にまとめて出版し、英米で飛ぶように売れている。
制癌剤というものは、他の薬でもそうだが、患者が前向きの姿勢で、その病気と
立ち向かう場合にのみ、治療効果を発揮しうるものである。面白いことには、我々
の脳内には、2、3種類の内在性の抗腫瘍作用をもった物質(ホルモン)が存在
し、患者が病気を克服しようと努力する時のみ、活性化して、薬剤と相乗効果を
発揮しうる。著者はわずか14歳で、NPO「CCC」(癌の子供たちを支える会)
を立ち上げて以来、10年近い密な活動や体験から、そのような精神力の果たす重要
かつ不思議な働きを実感していた。
この本を読んで、読者一人一人が、年の相違にかかわらず、癌を自力で克服すべく、
ここに登場する人物たち自身の涙ぐましい体験から勇気と活力を汲み取れることを、
私は大いに期待している。一例として第9章を挙げれば、ザック・ヨークは、脳腫瘍の手術を
17回も繰り返し受けたのち、その後遺症をものともせず、自分の松葉杖を登山向けに
改良した後、(アラスカのマッキンレー山につぐ)米国本土内最高峰のホイットニー山(海抜4350
メートル、カルフォルニア州)の登頂にみごと成功した。私自身も登山家だから、その快挙の困難さが
良くわかる。彼はさらに将来、アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロ(海抜5900メートル)
にも挑戦する計画を抱いている。そのような山岳ドラマが映画化されヒットすれば、
その売り上げの一部を脳腫瘍などの難病に効く新薬の開発研究への補助金や癌に苦しんだ
子供たちを助ける奨学金にあてることができるからだ。。。
私は小児癌にかかった経験はないが、敗戦後まもなく、小学4年の春、小児結核で、
数か月自宅療養を強いられた。当時、肺結核は癌と同様、死をもたらす恐ろしい
病気だった。幸い、駐留軍からもらった「パス」という特効薬のおかげで、死に
至らず、復学した。しかし、小学校を卒業するまで、丸2年間半、いわゆる「激
しい運動」をすることを禁止され、体育の授業時間はいつも校庭の隅に座って見
学を強いられた。だから、クラスメートと一緒に放課後、野球やサッカーを楽し
んだ経験がない。孤独の中から、運動不足を補うために、アルピニストだった父
親の勧めで、登山を始めた。登山やマラソンは緩慢な運動で、肺活量を必要とす
る激しい運動ではない。そして、雪を頂く北アルプスの山々に魅せられ始めた。
以後、半世紀以上、私は病気らしい病気にかかったことがない。そして、(一度
死線を越えた人間に共通な)「冒険好き」になり、海外生活をもう35年以上も
続けているが、淋しいと思ったことがない。
もう25年以上昔の話だが、私が南ドイツの国境の山々に近いミュンヘンのマックス・
プランク研究所で、癌研究をしていた頃、私の院生の一人が白血病と闘っていた。彼は
数年後に完治し、博士号を取得し、現在スウエーデンのある大学で教授として、医学関
係の研究を続けている。ちょうど同じ頃、トムという私の親友で、米国のジョンス
ホプキンス大学医学部教授をしていたボストン・マラソンの常連が突然、癌になった。
彼も自分の研究を続けながら癌の治療にも励み、数年後に完治すると、家族(妻、娘、
息子)と一緒に、念願のヒマラヤ登山をやってのけた。この本は、そういう昔の知人たちを、
私の脳裏に懐かしく思い浮かべさせる。。。
トムについては、もう1つ大事なことを付け加えておきたい。彼は1970年代初
頭、ハーバード大学医学部を卒業して、ワシントン市郊外にあるNIHという医
学総合研究所内にあるエド・コーン博士の研究室で、ある土壌アメーバから、珍
しい単頭のミオシンを発見した。ミオシン線維はATPaseの一種で、一般に、
アクチン線維によって活性化されて、ATPを分解しながら、その化学エネルギー
を運動エネルギーに変換して、筋肉収縮や細胞分裂に必要な動力を提供する。と
ころが、このアメーバの単頭ミオシンは線維を形成しないどころか、アクチン線
維に接触しても活性化されない、非常に奇妙な分子だった。やがて、トムはこの
ミオシンの活性化に必要な別の蛋白を見つけて「コファクター」と名付けた。し
かしながら、この「コファクター」が一体何者なのか知らぬまま、母校ハーバー
ドに戻って助教授に就任した。
1974年に彼と入れ違いに、私がコーン博士の研究室にポスドクとして加わり、
この「コファクター」の正体を生化学的に暴く仕事を任された。
2、3年の研究の末、その正体をやっと突き止めた。単頭ミオシンの重鎖を燐酸
化する珍しい酵素(キナーゼの一種)だった。それから、17年後に同様なキナー
ゼが哺乳類にもあることが判明し「PAK」と名付けられた。そして、今日、こ
の「PAK」がヒトの癌の7割以上の増殖や転移などに必須であることが確認さ
れている。従って、プロポリスなど種々の「PAK」遮断剤が、これらの癌の特
効薬になることは極めて明白である。もし、35年ほど昔、トムが奇妙な「コファ
クター」の存在に気づかなかったら、今日のめざましい癌治療薬への開発研究は、
相当遅れていただろう。。。
アメリカ人には珍しく、トムの座右の銘の1つに「土曜日に仕事をせよ!」という
言葉がある。幸運が訪れるからだそうだ。あの「コファクター」を見つけたのも、
ある土曜日の午後だった。。。
Review
“Incredibly life affirming and inspirational. I loved it!”
--Peter Walsh, New York Times bestselling author of It’s All Too Much! and Enough Already
“Perseverance will move you to tears, teach you to appreciate, and inspire you to persevere.”
--Tal Ben-Shahar, New York Times bestselling author of Happier and The Pursuit of Perfect
“Perseverance puts a very human face on courage and strength. Carolyn and the young people she has worked with are an inspiration to us all.”
--Gay Hendricks, New York Times bestselling author of The Big Leap and Conscious Living
"With tremendous respect and grace, Carolyn Rubenstein tells the stories of twenty survivors of childhood cancer -- in their own words. Through these real-life tales of survival, Perseverance offers not only great hope to those battling illness or caring for a loved one but also profound insight for all of us seeking to lead a meaningful life."
--Daniel H. Pink, New York Times bestselling author of A Whole New Mind
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