2008年5月28日水曜日

米国に代わるべき大国(Fareed Zakaria)

泥沼の「イラク戦争」に米国が手を染めて以来、戦後60年近く続いた米国の政治的、経済的繁栄に影が差し始めた。21世紀の世界を米国にかわってリードし始める大国は一体どこだろうか? 最近「経済的な大躍進」を続け、かつ世界の総人口の5分の1を占める中国だろうか? あるいはそれに次ぐインドだろうか? あるいは統合しつつある「欧州連合」(EU、総人口5億人で世界3位) だろうか? 60年以上君臨していた「米国ドル」は日増しに価値を失い、欧州の「ユーロ」が世界金融界の王座を今や占めつつある。

戦後60年間以上、米国という「大樹」の影に隠れて、あたかも米国の「植民地」あるいは「属国」のごとき振る舞いを続けてきた日本の政界や財界にも、来たるべき次の「大樹」をしっかり見極めるべき時期が刻々と迫ってきている。従来通りの「米国丸」追従一辺倒路線では、激しく躍動しつつある来たるべき世界の荒波を乗り切ることは今後、到底できないからだ。

著者は、米国丸の「沈没」を予測しているわけでは決してない。今後の世界に「米国独占時代」の終焉が訪れ、他の「複数の大国」が、それに代って、力を貯め込んできている事実を指摘しているに過ぎない。ちっぽけな「日本丸」のとるべき今後の針路にヒントを与えるかもしれない(「先見の明」のある)本として、特に政界や財界の指導者たちに、読書をぜひお勧めしたい。

なお「民主主義の未来」(邦訳、2004年)で好評を博した著者ザカリアは、日本の大衆にも既に馴染み深く、政治や経済に関する複雑な問題を、我々「しろうと」にもわかりやすく説明しうる文才がある。

もっとも、英文原書の実際のタイトルは、「民主主義」(Democracy)ではなく「自由主義」(Freedom)であり、「この2つを決して混同してはいけない」というのが、ザカリアの主張の1つである。従って、邦訳のタイトルは皮肉にも、その点で読者に当初から混同を招いているきらいがある。私自身は「自由主義」信奉者(リベラル)で、民主主義、特に日本の保守的ないわゆる「衆愚(民主)政治」に愛想をつかしている。数学の公理や定理の正否を、「しろうと」による多数決で決定するのは、大きな誤りだと今でも固く信じている。

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