太平洋戦争末期に米国の国防 (陸) 相を担当していた高齢(78歳)のヘンリー・
スティムソン ( 1867ー1950 ) は実は、ハーバード大学出身の親日的な
法律学者だったが、戦争終結直前に広島と長崎への原爆投下命令書に不本意なが
ら署名をせざるを得なくなかった。その悲劇に至る過程や政治的(特にFDRの
急死とトルーマン大統領就任に伴う反ソ反共強硬路線)や軍事的な背景を、著者
シーン・マロイが、画期的な「原爆投下決断の内幕」(The Decision to Use the
Atomic Bomb)のレベルを更に越えて、新しく公開された「極秘情報」に基づき、
この本で戦争史実を鋭く分析している。
スティムソンは、原爆投下予定候補地リストから、日本の古都で伝統文化の中心
地である「京都」を除外することには辛うじて成功したが、他の人口密集都市で
あり、米軍の空爆をまだ余り受けていない、「軍港」の所在地である広島と長崎
に住む非戦闘員 (老若男女) の生命を原爆による大量殺りくから救うことは、過
労と力不足でできなかった。
戦後まもなく、彼は原爆の悲劇に責任を深く感じると共に、トルーマン大統領や
その閣僚と肌が合わず、国防 (陸) 相を潔よく辞任した。もし、(1945年4
月に急死した)史上最大の大統領FDRが太平洋戦争の末期(7ー8月)まで存
命だったら、(大量殺りく兵器の使用に強く反対していた)スティムソンの助言
を尊重して、原爆投下を避けることができたかもしれない。。。
1つ特筆すべきことは、スティムソンは常に「天使のような人物」ではなかったと
いう事実だ。日本による(ハワイ島の)真珠湾奇襲の10日前、彼はFDRと密
談を交し、「いかにして奴ら(日本)を誘き出して、(米国大陸には打撃になら
ない形で)最初に奴らに発砲させるためには、何をしたらいいだろうか」という
作戦を入念に練ったということが、彼の日記にはっきり記してある。日本がその
「ワナ」にまんまとはまったというわけだ。米国政府は「奇襲」を事前にキャッ
チしていた。そして、奇襲直後に、万をじしていたかのように、日本に宣戦を布
告した。敵は始めから「うわ手」だった。。。
参考書
邦訳「原爆投下決断の内幕」(上下2巻、1995年)
(The Decision to Use the Atomic Bomb)
小人「トルーマン」の野心(外交手段)、戦争終結とは全く無縁!
なぜ、日本が降服寸前に、広島と長崎に米国(トルーマン政権)が原爆を敢えて投
下する決定をしたのか、その真の理由や動機を理解 (しっかり把握) するために、
この英文原書の邦訳「原爆投下決断の内幕」(上下2巻)はもっと日本人読者の
間、特に(米国政府にあくまで追従しながら、戦後の) 日本の政治を牛耳っている
保守的な指導者たちに、読まれるべき労作である。
終戦前に、既に米ソ間で「冷戦」が始まっていた。ルーズベルト大統領の急死に
ともない、棚ぼた式に大統領になった (新米の) トルーマンは、ソ連の老練な指
導者スターリンに、外交の場で始終なめられていた。ソ連は東ヨーロッパ諸国全
体を自国の領土や衛星国にしようと虎視眈々と狙っていた。それを威嚇、阻止す
るためには、トルーマンの手元には唯1つしか手段がなかった。ソ連にはまだ開
発されていない「原爆」だった。それを今や「虫の息」の日本に落として、その
未曾有な破壊力をソ連に見せ付ければ、さすがのスターリンも尻込みするだろう
と、トルーマンは考えた。しかし、米国の原爆開発チームは7月中旬に最初の原
爆実験に成功したばかりだった。実戦用の(広島・長崎に投下すべき)原爆はま
だなかった。もし、原爆投下前に、日本が降服してしまったら、スターリンを原
爆で威嚇するチャンスを失う(降服した国に、いくら何でも原爆は落せない!)。
そこで、トルーマンは故意に降服を遅らせ(原爆製造のための「時間稼ぎ」をす)
るために、巧妙な手を打った。ポツダム宣言で、日本に「無条件」降服(つまり、
「天皇制の廃止」)を迫った。日本政府が受諾できないのを見抜いた上で。。。
馬鹿な日本政府はそのワナにまんまとひっかかって、降服を渋った。2、3週間
後(8月上旬)に2発の原爆がみごと使用準備オーケーの状態になった。後は、
歴史の良く知るところである。こういう史実を知った上で、なお「米国追従」外
交を続ける日本の政治指導者連中を批判すべきである。
この英文原書(The Decision to Use the Atomic Bomb)は日本国内でまだ市販
(通販)されているが、その邦訳(上下2巻)は(奇妙にも)絶版どころか「古
本|さえも出回っていない。誰がこの邦訳の流通を阻止しているのだろうか?
米国政府からの指図で、日本政府が出版社や通販書店に圧力をかけているのだろ
うか?
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