2008年12月3日水曜日

遠藤 章著「新薬スタチンの発見」(岩波科学ライブラリー)

日本では一体なぜ、世界的な評価に価する独創的な医学研究、特に世界的に服用
される医薬品の開発者が育ちにくいのだろうか? 今秋(「ノーベル賞への近道」
といわれる)「ラスカー医学賞」をもらった遠藤章氏はそのごく少ない例外で、
製薬会社「三共」勤務時代に、世界に先駆けて、抗生物質の一種で、コレステロー
ル低下薬「スタチン」を開発した研究者であるが、面白いことには医学部や薬学
部出身者ではなく、農学部出身者(東北大)である。しかしながら、彼のスタチ
ン開発の道はすこぶる厳しいもので、挫折をいくつか乗り越えた彼の「不屈の精
神」なくしては、ここまで成功はしなかっただろう。薬学者(制癌剤の開発研究
者)の1人として、私にも色々学ぶことが多かった。これから医薬の開発を志す
若い人々に、ぜひ勧めたい読み物である。「日本発」の世界に冠たる医薬品の開
発研究の発展のために! 参考までに、目次(抜粋)を下記に紹介しよう!

1 新薬の種を求めて
コレステロールと冠動脈疾患、どうすればコレステロール値がよく下がるか? 
ペニシリンの発見、青カビから“新薬の種”を発見

2 動物実験で二度の危機
ラットのコレステロールが下がらない、ニワトリやイヌには劇的な効果!
肝毒性の疑いで再度の危機

3 重症患者には安全でよく効いたのに
再復活へ、臨床試験は順調であった、突如中止に、失敗の原因

4 強力なライバルの出現
幻のプロポーズ、世界最大手「メルク」のねらい、新たな発見、メルクの独占を
許さず、商業化スタチン第1号の誕生

5 大規模臨床試験から見えてきたこと
コレステロール値を下げて疾患が減ったのか? 大規模臨床試験、多彩な生理・
薬理作用

0 件のコメント: